第7章 薬の話 認知症症状に効果があると認可されている薬3項・メマンチン塩酸塩・メマリー
④メマンチン塩酸塩・メマリー
メマンチンは1項〜2項で紹介した3剤とは違い、アセチルコリンによる情報伝達には関わりがありません。
メマンチンは、記憶に関わる脳の海馬という領域にある神経細胞に働きかけて、記憶の長期増強を助ける作用を持っています。海馬はヒトで記憶に関わる領域として20世紀に研究が始まり、機能画像という方法で記憶に関連していることが報告されています。この記憶に関係する海馬の神経細胞の表面にあるNMDA受容体に関して、アルツハイマー病では感受性が亢進し、細胞興奮がし易くなって過敏になりノイズが増えて情報伝達を傷害しています。このNMDA受容体に対して部分的に遮断してノイズを減らし、主たる情報のコントラストを改善する方法で情報伝達改善に働くのがメマンチンです。
中等度と重度の症状の方にだけ投与が認められています
メマンチンはアルツハイマー病の中等度と重度の方にだけ投与が認められています。
ノイズを減らす方法ですので、アルツハイマー病初期の方では、ノイズを減らす時に必要な情報伝達も影響を受けるため、効果としてマイナスが多いと考えられているためです。
また、認知症による心理行動異常(BPSD)に対して、妄想や攻撃性に効果があることが報告されています。認知症で感情機能におこる異常性を情報伝達で減少させてくれるのかもしれません。
メマンチンは少量から2週間ごとに徐々に増量して20㎎を一日1回で維持します。
これ等はアルツハイマー型認知症に効果のある薬剤です。ですが、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の3種類とNMDA受容体部分阻害剤は一緒に使用することが出来ますが、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬同士は一緒に使用することができません。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
-
- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
-
- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
一覧へ戻る