第1章 症状の話 第2節 最初の兆候1項・よく聞かれる最初に出現するサイン
家族や知人が気づく「もしかして?」
認知症の発症時期を指摘するのは、大変困難なことでして、この時点ですと指し示すことは残念ながらできません。
しかし、「今思えば、この頃ではなかろうかと言う見当がつく」とおっしゃるご家族や知人の方もいらっしゃいます。そう思われるエピソードについては本当に様々です。
これまでに実際にご相談のあった、「最初の兆候エピソード」をご紹介します。
episode翌日の約束をしたが当日にはもう忘れていた。せっかく前日に確認をしたのに忘れていたので、どうしたのだろうと、前日の確認したときの話を思い返してみたが、しっかりと返事をして分かったと返事をされていたのに、忘れていて「おかしい」と感じられた。その人となりや、確認をしたことの状況などを考えると、いつもと違っているという結論に行き当たる。
episode真剣に部屋中を引っ掻き回して探し物をしていたので、よほど重要なモノなのだろうと、心配して何を捜しているのかを尋ねてみると、「何を捜していたのかな?」と思案顔になってしまった。あんなに必死になって探していたのに!?と大よそ予想もしない返答に驚かされた。
このような「約束を忘れる」や「何をしているのかわかっていない」または「何をしていたか覚えていない」は、最初の兆候として、家族や知人の話から聞かれることが多い例です。
「おかしいなぁ」と感じられる状態が最初の兆候
episode作業をされていて、その時使用していた機器の操作レバーを忘れたり、スイッチを押すのを忘れていたりと、今作業していた機器なのに忘れてしまう。このような目の前の、時間的にすぐ前の操作のことを忘れている。
こうした手違い操作手順の忘れにその場に居合わせた人には驚きのエピソードとして最初の兆候だったと話していただけることも少なからずあります。
episode部屋が以前と違って、乱雑なモノの置き方が目につくようになり、ほっておくと汚れてカビが生えたり、虫が湧いたりという状況になる。
変化が目について、おかしいなあと感じられる状態が最初の兆候として、捉えられていることも多いです。
episode建築業の方で、工事の入札に行って金額を書いた紙を会場の前に置いてある箱に入れて、自分の席に戻ろうと振り返った途端、自分の席が分からず、とあえず会場内の側面の壁まで行って入札が終了するまで立っていた。
という劇的なエピソードの最初の兆候もありました。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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