「忘れた」と言うのでは説明がつかない
普段の会話で、知っている筈の語句が出てこないなど、「忘れた」と言うのでは説明がつかないそれが見極めるポイントの1つです。
ご相談のあったエピソードごとにポイントを見てみましょう。
episode書いていた宛名の書きなれた字を書き始めたが、書ききれず途中で手が止まってしまう。
こうした経験はよくあるのですが、物忘れでまあいいかとスルーされます。
ポイントは、「どんな漢字」なのかという点です。書きなれた自分の住所、名前でこれがあると問題です。
檸檬や薔薇などの普段書きなれない漢字や、浴衣や鯖などのよく目にするが自分では書く機会が少ない漢字はスルーしても問題ないでしょう。
episode友人の葬儀に参列した折、こみあげてくる感情がなくどういう顔を、どういう表情をすれば良いのか浮かんでこなくて難儀した。
実にリアルに困惑した初めての感情体験として訴えられました。このように感情での症状が最初であった方もおられます。
ポイントは、どういう場面化が分かっていて、掛け替えのない友人を失ったことの理解もできている、なのに感情が出てこなかったという点です。
episodeパソコンを使っていて、手慣れた操作で表を作ろうとして、クリックする場所がフト違っている気がしてアレッと思い、もう一度その前に戻って行動をなぞるように再現していっても繋がらない。どうしちゃったのだろうと心配になりパソコンを中止して、時間を置いてやり直すことを繰り返してようやく繋がって安心した。
しかし、これ以降、操作手順を紙に書いて貼っている。
ポイントは、手慣れた作業過程が流れなくなった点です。
episode夫が亡くなって、将来や日常生活に不安を感じて、家族にアレコレ尋ねることが多くなり、やがて夜中や早朝など時間帯を問わず尋ねるようになり、家族は対応しきれなくなってきた。
配偶者喪失による不安、抑うつ感などによるものとして相談を受けた医療機関の対応はそう判断して加療を始める。
しかし、抗不安薬や抗うつ薬などでは本人の不安や時間を考えずに尋ねることへの効果が得られず、医療機関をいくつも渡り歩く結果となってしまう。そのうちにこれはオカシイということに気付いて、認知症疑いで受診されるに至った。
ポイントは、時間構わず尋ねるということで、家族が対応しきれなくなった点です。
episode大きなレストランに食事に行ったとき、メニューをみて注文したあと食事が運ばれてくるまでの時に、いきなり立ち上がって置いてあったピアノに向かって座るなり、弾き始めたので、家族はあわてて連れ戻した。
初めて行ったレストランでの行動に家族は、周囲の目もあっての行動に出たのですが、これ以降は訪問した友人の家でもいきなり玄関から上り込んで友人の化粧台に座って、自分の化粧をそこに置かれていた化粧品を使って、始めたことが出現したのです。
ポイントは初めて訪れたレストランで、断りもなくピアノを弾き始めた点です。