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コラム

現役ケアマネのリレーコラム【第8回】

ケアマネージャーのホンネを毎月更新!

Y事業所
東京都
Mさん

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介護支援専門員として思うこと

はじめに

介護支援専門員として仕事を始めて、10年が経ちました。この10年間、多くの方と関わり、出会いと別れを重ねてきました。経過した時間に関わらず、その方たちと過ごした記憶は心に深く残っています。

介護支援専門員として初めて担当した利用者で、現在も引き続き担当している方も少なくありません。反対に短い期間で担当を終えたケースもあります。お付き合いの時間に長い短いと差はありますが、その間にご本人やご家族から様々なお話を伺い、一緒に笑ったり時に涙を流したり、その方の人生そのものに触れて感銘を受けることもあります。

利用者の旅立ちに直面することも多く、その際にご家族がこんなことをおっしゃったことがあります。
「今までは一度もありがとう、と言わない人だったけど、亡くなる前にありがとう。と言ってくれた。その言葉で介護の苦労も忘れてしまった」
その言葉を聞いて、私も穏やかな気持ちがいたしました。続けて、ずっと真摯にサポートしてくれたあなたのおかげです。とお礼の言葉をいただき、この仕事のやりがいに立ち返らせていただくよう感じました。

介護の問題

現在の日本の介護保険制度は、すべてを保険でカバーすることは難しく、家族が保険でカバーできない部分を担うことが多くあります。特に自宅での介護の負担は大きく、働き盛りの世代でも仕事と介護の両立が難しいと言われています。そして、いわゆる「老々介護」の問題も深刻です。介護者にも介護が必要な事例もあります。

自宅での介護に休みはありません。介助をするご家族から挫けそうです。と相談をいただいた経験は、介護に関わる人なら一度はあるのではないでしょうか。
ただお話を聞くことが必要な時もあります。とりとめもないお話でも、ただ聞くこと。それによって、「あなたは一人ではないですよ」と伝えることができれば良いのではないかと思います。

相談をした方も、思いを吐き出してほっとされるのでしょう。もうちょっとがんばってみます。と介護に向かう気持ちを取り戻してくださいます。このようなことの繰り返しで、二人三脚で進んでいるイメージでしょうか。介助をするご家族にもケアが必要なのだと感じます。

困難

唐突ですが、広辞苑で「困難」と引くとこのように載っています。「物事を成し遂げたり実行することが難しいこと」まさに、困難な案件もあります。

初めてサービスを利用する方との面談は、お互いに緊張と不安、期待を持って始まります。事前の情報で、自分なりのイメージを持ってお会いしますが、実際にお会いしてみるとイメージと正反対の方だった、なんてこともあります。
いろいろな方がおられます。同じような接し方をしても、反応はお一人ずつ違いますし、言葉の難しさもあります。同じ意味合いでも、言い方次第で真逆になることもあります。「いいです」という言葉などは、その良い例ではないでしょうか。

利用者と良い信頼関係を築くことからすべてが始まります。しっかりとしたアセスメントを得ることができれば、良い経過に結びつくことができます。

私が担当する利用者は、高度経済成長期を働き盛りとして支えた世代の方が多く、非常に興味深く楽しいお話を聞く機会があります。当時難しいと言われていたプロジェクトを成功させた方や、日本に数人しかいないという難しい職に就かれていた方。
そのようなお話はまるで丁寧に作られたドギュメンタリーを見ているようです。楽しかったこと、自分が一生懸命取り組んだことをお話しされるとき、みなさんとても素敵な表情をされます。それを見て、それがこの人の生き様なのか、と深く感動します。

経済的に恵まれてきた人、そうでない人、高い教育を受けた人、家庭環境がそれを許さなかった人。家族が多く、愛情に満ち溢れて生活している方。家族が多くても、様々な事情により孤立してしまっている方。伴侶を亡くされた方、生涯独身で過ごした方、利用者様の背景もそれぞれです。一見同じように見える状況でも、誰ひとりとして同じ人生はありません。

困難な案件

私が困難だと感じた事例についてお話します。その方は、ご本人からケアマネージャー交代の希望があり、私が担当することになった方です。がんによるターミナルケアを受けられている方でした。お生まれは海外でご結婚をしていた時期もあり、お子様もいらっしゃいます。ただ、ご家族からは亡くなった時以外は一切連絡をしないでほしいというご意向がありました。

事前の資料では、お若いうちは現場監督をされていたということで、人を束ねて仕事をしていた方なのかな、というイメージを持ってお会いしました。ただ、ご本人からは前任者から聞いているだろう。と言われ一切聞き取りができなかったのです。他人に対する暴言があったり、別の担当者を何時間も拘束して苦情を言い募ったり、などの良くない情報がありました。

その上ご本人ともご家族とも対話ができないという状況で、最も重要な信頼関係を築くことが困難であったのです。その方は入退院を繰り返し、最後は病院でその生涯を閉じました。そうして1つの案件が終了したのですが、すべての対応が後手に回り、ご本人にとってより良いサービスや対応が他にあったのではないか。もっと他にできることがあったのではないか。と苦い後悔が残りました。同時に、信頼関係を築くことと対話の重要性を痛感した案件でもありました。

初めての介護サービス

初めて介護サービスを受ける方は、介護保険制度について何もご存じないことが通常です。一つずつ説明し、思い込みや間違った認識を払拭してご理解いただくのには当然時間もかかります。また、私たち介護支援専門員に入ってくる情報とご本人の意向がずれていたり、そこに感情が入ってきて、些細な事柄が大きなすれ違いになりかけることもあります。

一度の訪問ですべてを把握することはできません。訪問を重ねていく中で信頼関係が少しずつ築かれていきます。そして、介護保険でできること、できないこと、できないことはどのようにしたらよいか、などをご本人やご家族の希望も伺いながらお話していきます。
適切に介護保険を利用しながら、ご本人もご家族も満足できる支援を目指します。もちろん順調にいくことばかりではありません。ただ、困難に思える事柄が起こった時でも、満足いく支援を行うことをあきらめてはいけないと思います。

コロナ禍での支援

現在、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっており、収束が見えない状況です。新たな困難と言えるでしょう。高齢者の方はご友人やご家族が鬼籍に入り、人との交流が途絶えがちになっているところで、コロナウイルスはさらに人と人の触れ合いを断絶していくかのようです。その中で、ヘルパーの訪問や通所介護の利用がどれだけ利用者様の慰めになっているかを感じます。

私も介護支援専門員として、担当する利用者はかならず月に一度以上は訪問するようにしています。訪問すると、待っていました。と笑顔を見せてくださり皆さんお話が止まらなくなります。時間が許す限り、お付き合いさせていただくようにしていますが辞去するときに残念そうにされる様子にいつも後ろ髪が引かれる思いです。

お話の内容は、利用しているサービスについての感想やお礼から、時間が経つに連れて家族への苦言が出てきます。その中でも多いのが、なかなか会いに来てくれない。というものです。このご時世でやむを得ない状況とはご本人もご理解されているのですが、やはり寂しさをお感じになるのでしょう。ご家族との会話もあまりされていないことが伝わってきて、今後のケアにおいて重要な思いが募っていることを気づかされます。

ご本人と周囲の方との人間関係は、支援をしていく中で非常に重要です。私たちの仕事は、ご本人はもとよりご家族、親戚、近隣住民の方やご友人、主治医、事業所や公的機関と多くの人との調整や関わりを有します。
中でもご本人とご家族との関係は特に大切です。関係が良好なご家庭であればスムーズにいくことが多く、難しい状況にあるご家庭のケースでは、ご家族が支援を行う上で障害となってしまうこともしばしばです。ですが、どんな状況であっても、目的はより良い支援を行うことであることをご家族にも理解いただき、共有していかなければならないと思います。

最後に

日本は超高齢化社会です。医療の発達が生み出した「人生100年時代」。人類が初めて直面することです。人生が長くなり、退職後の人生を謳歌できる自由が生まれたのと同時に、新たな問題も生まれました。医療、介護については制度の財源の問題とともに現場の人手不足なども日本という国としての課題として取り上げられてきました。コロナウイルスはそれに拍車をかけた形となっています。

コロナ禍により政府はテレワークを推奨し、人との接触を制限するよう呼びかけています。もちろんそれは必要な措置だと賛同していますが、医療や介護の現場では難しいことです。今回のコロナウイルスの感染拡大により、私たちは社会を支えるインフラの一つとして、非常に大切な業務についていることを改めて実感する機会ともなりました。医療・介護の現場で目の前の誰かのために働く方々を心から尊敬するとともに、自分がその中の一員であることを誇りに感じています。

介護支援専門員の仕事に「完璧」ということは難しいと感じています。ただ、どんな状況であっても利用者のために「より良い」ことは何だろうかと寄り添い続けることはできます。人生が後半に差し掛かった時に介護サービスの利用を始める方が多いと思います。その方がどう生きるか、そして、どう死ぬか。人生の幕を閉じるその時まで、過ごす時間がより穏やかで有意義なものであるように、日々全力を尽くしていこうと思います。

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