第4章 環境の話 第2節 社会環境2項・高齢者に厳しい社会環境
親切な売り場を作って経済行為を楽しめる工夫を
コンビニやスーパーの売り場は、商品ごとのブロック分類の基準が明確でなく、どこに行けば希望の商品があるのか店ごとに違います、高齢者にはわかりづらく、尋ねる店員さんもなかなか見当たらず、レジの方も忙しそうに仕事をされているため聞きづらい状況で、結局は分らずに店を後にする残念な結果となっています。今や高齢者が大半を占める日本で、スーパーが主体の店舗では、商品の分類ブロックが店ごとにまちまちで、書いてある表示版も字が小さく上の方にあるため、視力低下の高齢者には不親切です。これでは街は高齢者を歓迎していないと、受け取られても仕方がないと思います。席を譲り、高齢者の荷物を持ってあげた日本の「おもてなし」のこころは少し消えかかっているよう感じます。これは、店舗やスーパーやコンビニのちょっとした努力や、行政指導で解決する問題と思われます。是非努力して頂いて、買い易い、入り易い、尋ねやすい「おもてなし」のある商店、商店街に変えてほしいものです。これで、高齢者は、出掛けて行って、原材料を買って、調理を楽しみ、会話を楽しみ、お金をゆっくり勘定して経済行為を遂行し、身体と精神の健康を取り戻し、認知症の発生と進行予防をすることに繋がっていきます。
扱いが困難な通信環境が不安な心を産む
通信手段の変遷も著明で、高齢者の方では固定電話が通信手段でした。それが、携帯になりスマートフォンになり、小型化して文字盤が液晶画面でおまけに小さい文字で読みづらく、番号をプッシュするところも小さすぎて、視覚不良で手指操作の巧緻性がよくない高齢者では扱いが困難となり、認知症者では操作困難な代物で扱いにくいものになっています。徐々に社会の変化が通信手段の複雑化を進めて、認知症患者、高齢者に疎外感を感じさせ、通信手段で確実に蚊帳の外へと追いやっている変化が起こっています。
このため社会情報の供給が高齢者には行き渡っていない状況にあり、社会の変化が確実に伝わっていない状態が、環境によってつくられています。そのため諸事情に疎く、今までの生活を維持することが、理解困難や情報不足で諦めざるを得ないところに来ていて、活動性の低下や「分からない事ばかり」が不安なこころを産んで、高齢者を孤立から認知症への道を歩ませています。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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