第3章食事の話 第1節 実は食事が治療と予防のポイントであること4項・今日から始めたい認知症促進の予防法
イタダキマスで認知症予防
食事の最初の「食べるモノ」という認識は、イタダキマスという儀式です。出された食材への感謝と調理された方への感謝が認知され、言動によって発現されます。
この過程は、多くの脳機能を反映しており、どれかが機能低下すると、とたちまち発現されなくなります。
これは奥深く、人間の尊厳が関わっており、感受し認知して自己の意を運動機能を通じて表すので、観察によって認知症の種々の脳機能低下のレベルを見せてくれます。
この表現があれば、自己意識の保持がなされ、感謝などの意思表示はありと考えても差し支えないかと考えられます。
ですから、イタダキマスの食事前の挨拶は是非続けて、こういった脳機能の維持をして頂ければ、認知症予防につながります。
食事の前の空腹感が脳の栄養に重要
食事は日に3回する習慣が多いですが、この時食事の前に空腹感があることが、脳由来の神経栄養因子の生産を増やすケトーシスの促進を図るために重要です。
従って、朝食前に空腹感を感じなければ、昨夜の夕食が多過ぎたか、時間が十分に空いてないかです。昼食前、夕食前の空腹感も同様で、空腹感がなければ朝食、昼食を食べ過ぎたか、時間を十分あけてないか、それともおやつを食べ過ぎたかです。
特におやつでスイーツを食べ過ぎていれば、これはもう認知症への道を突っ走っていますので十分注意が必要です。
毎日体重を測定するようにすれば、更に細かく正確にこうした食べ過ぎか否かが分かります。
多少食べ過ぎても、甘いモノを取り過ぎてもたまには良いですし、運動を適度にされていれば強く注意されなくても良いかと思います。
「わんこそば方式」で楽しい食事を
認知症では一気に出されたものを掻き込むことがよくみられます。
これは一度に飲み込む量が多過ぎて、誤嚥に繋ります。
このような行動は改善しないと、誤嚥性肺炎を繰返し体力低下につながり、肺炎から重篤な身体状態へと進むことになりかねません。
これを防ぐ手立ての一つは、一つの器に盛り付ける量を、一度に飲み込んでも良い量に減らして、少量を盛り付ける事です。
それで、飲み込み状態を見て全量飲み込まれたのを確認してから、次の盛り付け量を器に入れるようにします。これを繰り返して全量摂取に繋げます。
丁度、岩手県の名物のわんこそばの要領で、少量に小分けして回数で食べる「わんこそば方式」が、安全です。
「よく食べられたね、もう一杯」と言葉をかけて楽しく頂くと、食欲も出ますし美味しく、楽しく頂けるので、とってもいいリハビリになります。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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