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コラム

認知症全般知識に役立つコラム

認知症学会専門医 占部 新治先生による、「認知症全般知識に役立つコラム」です。第1〜第4 金曜更新!

占部先生のプロフィール

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第3章食事の話 第1節 実は食事が治療と予防のポイントであること1項・認知症の原因から見る気をつけたい食材

認知症の原因

食事でヒトは脳を含めた身体を作り、エネルギーを得て機能を作り上げ、活動しているので、食事は認知症に深くかかわっています。意外かもしれませんが、食事が今すぐできる認知症の予防や治療の方法の一つだと思われます。
また、この食行動の異常が最初に気付かれる兆候でもあり、高齢者での身体的特徴とも関わっています。

認知症の原因に係る観点では、アルツハイマー病では脳の壊れた神経細胞にアミロイドβ蛋白があってそれが神経細胞死滅にかかわっているメカニズムが報告されています。
このアミロイドβ蛋白が脳内に何故出現してくるかと言いますと、脳内の炎症産物として出現してきます。脳を守ってくれるものですが、過剰になりますと神経細胞にくっついて、神経細胞同士の連絡、信号伝達を壊し、神経細胞を死に追いやります。
したがって、認知症治療、予防の観点からは、このアミロイドβ蛋白が増え過ぎないようにすることが重要なカギになります。

この視点で認知症の根本治療薬が開発されていますが、両刃の剣で治療薬開発は困難な状況にあります。
しかし、そもそも脳の炎症が増えないようにという点から言えば、炎症を減らしてアミロイドβ蛋白を必要以上に増えないようにすることが、治療と予防につながるのです。

認知症予防の鍵になる食材とは

認知症の治療と予防の鍵となる食材は、糖分です。糖分はエネルギーとして大事なのですが、多すぎると炎症を引き起こすことが多くなるので、適量摂取の制御が必要です。
ご存じのように、糖尿病では糖分過多から血管で炎症を起こして体内の臓器で糖尿病性網膜炎、糖尿病性腎炎、糖尿病性血管炎をみます。
したがって、脳内でも炎症が増えアミロイドβ蛋白が過剰に産生され、長年にわたり蓄積して認知症の引き金になっていきます。このことは、近年学会でも指摘され、糖尿病と認知症の関連性が多く報告されています。

ですから、認知症予防には食材として、糖分の適量制御で適正な量を摂取することが、治療と予防になることが分かります。
ヒトは生理的に一日の糖分処理は15gで、これ以上は処理が困難です。テレビやネットでも流行になっている若者から高齢者までを虜にしているスィーツは、取り過ぎるとたいへん危険になります。コーラ500mlには57g、スポーツドリンク500mlには25.5gの糖分が含まれており、スティックシュガーは3gの糖分です。

多くの方は幼いころから、手軽なファーストフードでチーズバーガー、ポテト、コーラなどのソフトドリンクの飲食をしております。したがって、糖分の摂り過ぎで、どんどんアミロイドβを産生して、長年にわたって蓄積し、中年になった頃には立派な認知症準備を作り上げています。
これでは残念ながら認知症への近道を走っているのです。

占部 新治(うらべ しんじ)

経歴
1976年
北海道大学 医学部 医学科卒業
1980年
北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
1980年
北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
1981年
北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
1995年
札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
1999年
札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
2001年
札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
2007年
北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
2011年
京都 三幸会 北山病院 副院長
2013年
京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
専攻領域
精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
主な著訳書
日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
主な著書
臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
所属学会
  • 精神神経学会 専門医、専門指導医
  • 老年精神医学会専門医、専門指導医
  • 認知症学会専門医、指導医
  • リハビリテーション医学会 臨床認定医

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