第6章 「認知症」予防の話 第2節 すぐに役立つ予防、これはやってみると良い予防策1項・血管型認知症 その1
原因が比較的はっきりしている血管型認知症
認知症疾患は、多くは変性型でアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症で原因はよく分っていません。一方、血管型認知症は少ないですが原因が比較的はっきりしています。
まず、脳血管型認知症では血管での梗塞、出血などによって脳血流が異常をきたすのが原因となっています。
したがって、脳血流に異常をきたさないことがその予防ということになります。
脳血流の異常としては、1)血管が詰まる、2)血管が破れる、3)血管の血流が低下する、4)血流は良いが流れる血液自体に問題があって流れていないのと同じ様相を呈する4つになります。
1)血管が詰まる
血管内腔が詰まる場合で、モノが詰まる塞栓と血液が固まって詰まる血栓があります。モノが詰まるのは血管内に異物が入ったり(空気や異常注入物)、詰まるものが血管内に出来て(血管壁についた結合識、繊維物、コレステロール等の塊など)詰まる場合を言います。これの予防は、モノを入れないことに尽きます。詰まるモノが血管内にできる場合は、原因となるモノを血管内で作らないことで、原因となるモノでは血管壁にくっつくコレステロールや脂質を必要以上に増やさないことです。したがって高脂血症の予防に準じます。
血液が固まるのは、血液疾患で血液を固める凝固系の障害による場合が多く、先天性の疾患が多く、または特発性といわれる場合で予防の仕様がないケースです。
そのほかに意外とよく目につくのは脱水などで血液が濃くなる場合があり、脱水を招くような水分摂取が不足する場合や水分蒸発が多くなり過ぎるような高温や乾燥の環境があります。これらは、部屋の温度や湿度を必要以上に高くしたり、乾燥させないように気を配ることです。今はコンピューター制御で快適な状態に保つようにできるエアコンも出回っているのでそれらを使うことで予防可能です。
外では、気温に合わせた服装や風通しのよい素材の衣類を使うようにしましょう。地球温暖化で外での活動は、十分に気をつけることで、水分をこまめに取り、体温変化を少なくする保温剤、保冷剤を使うことをお勧めします。ドーハの陸上世界選手権で競歩の日本選手が、保冷剤を帽子の中に入れたり、水分を頻回にとっておられたのを見た方も多いと思いますが、あれを真似すればイイのです。水分摂取は出たものを取り入れるが理想的ですので、水だけでなく電解質(Na、Cl、Kなど)も一緒に補給する補給液が最近は売られているので、それで補給するのが良いでしょう。環境温度は何も外気だけに限らず、サウナや車の中や、果ては重ね着の衣類にも注意が必要ですのでご注意をなさってください。
2)血管が破れる
血管が破たんする場合は、大動脈瘤の破裂が多く、これは血圧が関係してきますので、高血圧の予防に他なりません。皆さんもご存じのことで、塩分を控え、高脂血症予防としてのコレステロールや中性脂肪の摂取に注意を図ることに尽きます。ただ多くの方がなさる場合の注意点は、一気に減らすと良くないということです。控目を目指して頂ければ結構ですので、くれぐれも無理してやり過ぎないことです。
3)と4)は次回へ続きます。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
-
- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
-
- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
一覧へ戻る