第4章 環境の話 第2節 社会環境4項・仮想社会の危険
価値の計りにくい、慣れない決済がトラブルに
貨幣経済の世界にも、そうした進歩?が入り込んで、仮想通貨とまではいかないまでも、カード決済の世界がヒタヒタと、現金決済の仕組みを崩しています。現金で購入をしていた高齢者は、現金を手にしてその価値を計ることができていましたが、カードや数字だけの決済では価値を計るのが困難で、ついつい高価なものを気軽に決済してしまうことも多いように思います。犯罪も多く増えているようですが、それに近い高齢者を相手に、価値の実感がない状況において、トリックのように騙していく金融商品やその類が多くなっているように感じます。これでは、同意能力を問うまでもなく、普通の健常高齢者でも簡単に、騙されていきます。数字からハッキリしたイメージを持つことが苦手になる高齢者では、いとも簡単に間違いを犯すことになるのだという、「認知機能の低下」を真剣に考えて対応を考えて、しっかりした高齢者目線の対策ができないと、想像を超える危険な時代に突入してしまいそうです。
仮想現実と認知症予防
脳の高次機能は複雑で、こうしたイメージや価値を計る機能については、さほど研究が進んでいるとは言い難いです。これを追い越した形で、バーチャルな仮想現実の世界形成が驚くべき速さで進み、それが社会の仕組みとして法律で決められて来ているのが現状です。こうした社会環境の変化は、まともに高齢者を直撃し、認知症の世界へと誘って行っています。
認知症へ進むのを予防するには、仮想現実の世界を「是」とするのを今少し先延ばしにしては如何でしょうか?ヒトの脳は、現実からイメージする仮想の処理に十分対処できるだけの力を教育されていないように考えます。中学や高校での数学の記号や数字の定義によるイメージの仮想世界に、どれほど多くの学生が困難を感じて、試験でも苦痛に思っていることでしょう。現役の学生ですら、そうなのですから認知症者、高齢者、それより若い中年者にとっては、理解困難な世界です。その世界で経済が動き、モノをはじめとする売買が成立する世界になっているので、認知症への予防は難しい時代になってきています。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
-
- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
-
- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
一覧へ戻る