第2章 対応の話 第2節 困る症状、どう対処したらよいのかの秘訣4項・金銭行為への対応
症状によってはすぐに後見人制度を活用を。
この問題は、お金に絡む問題で方向が2つあります。
一つ目は、お金を無くす行為で、認知症が故に、分からず大枚を払ってしまう、騙されて支払ってしまう、手元にあるお金を忘れてしまっている場合、御釣りなどの計算が出来ずに余分な料金を支払う場合などです。この場合、認知が主として問題になり、支払う事の意味がよく理解できず行動してしまうことが多いようで、相手が悪いとどんどん持って行かれることになります。気付いたら身の回りの金銭が無い状態という事になります。
これは、同意能力と言うより、金銭そのものや金銭の授受が理解できない状態で、危険行為の範疇に入り、いわゆる財産等の管理能力低下から後見人制度の対象となります。このように、何のためにどれくらい支払うかが理解できていないと思われたら、すぐに成人後見人制度を利用されるべきです。これが一番の対応策です。色々な説明をご本人にしても理解できない時は、対応はこれです。
支払い忘れの原因の1つは認知機能低下
二つ目は、知らず知らずにモノを支払わずに持ち出す行為で、この場合は不法行為となり訴えられる場合になります。それも、対価を支払うことなど分からず、手続きなどすっぽかして手に入れてしまわれますが、ご本人は認知機能低下のため、違法行為と知ってやっておられるのではないのです。即ち違法行為でも「動機」が犯罪とは全く異なるのです。
従って、この行動に対する対応は、買い物は一緒に行って買い物では支払うことを思い出していただきながら援助することです。
地域対応では、店員さんが顔見知りで、一緒に買い物をして後ほどご家族に報告して代金を頂くという事も可能です。顔見知りでなくても、買い物ヘルパー係の店員さんを置くことで、早くから支援をして認知症支援をすることは可能です。
介護者一人が全部の日常生活に支援をすることは不可能ですから、専門専門で繋いで連携すると、地域での認知症者の生活は可能になります。移動支援専門員、各店での買い物支援専門員、各区役所での手助け専門員、病院や郵便局、銀行など公共場所での手助け専門員などをボランティアで埋め尽くせば、支援活動での介護・支援ストレスが少なく、支援の連携で認知症者を支えられます。
従って方向としましては「ボランティアによる各支援専門員設置」です。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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