第2章 対応の話 第2節 困る症状、どう対処したらよいのかの秘訣3項・危険行為、逸脱行為への対応
危険行為への対応
危険行為は、文字通りの危険な行為で、怪我や骨折、場合によっては死に至るものもあり、認知症が故の行動で起こってしまいます。認知症では、危険なモノという意識が無くなって、何でも触る、掴む、弄る、食べるの行為によって怪我、火傷、切断、骨折、死が待っています。
認知機能の低下では、こうした危険なモノを取り除いておくことはできませんし、触れない様に制止することも24時間傍に居ることはできませんから防げません。屋内ですら難しいのに、屋外になりますと道路や線路や橋、川や海など多くのモノが対象になりますから、前記のように防ぐ手立てはさらに難しいのが現状です。行動が危険につながると判断したときは躊躇なく制止するが大切です。しかし、行うのは決断が必要になりますので、日頃からすぐ動くを意識される様にすることをお薦めします。
方向としては「すぐ行動する」です。
別の手立てとしては、薬物療法があります。しかし、鎮静を目的として投与される薬剤は、抗精神病薬でその副作用から、米国食品医薬品局(FDA)から使用が危険視されています。ですが、副作用が少ない、めまい、フラツキのない薬剤がまだありますので、是非認知症専門医に相談してください。
逸脱行為への対応
危険行為に類似の行動になります。本人と介護者にとっては大変思いがけない行動に戸惑ってしまわれます。時と場合にぞぐわない言動、性的な異常行動もあります。性的な言動や性的逸脱行動の強制もみられます。これは、本人のこれまでの信用を一気に崩してしまう力があるので、要注意です。症状が出現しない様にする対応は、ほぼ困難です。
海外での同様な状況についても、皆さん困っておられ、マンパワーで抑えると言うのが現状出来る唯一の方法で、最終手段として抗精神病薬を使用するとの見解です。しかし、"危険行為への対応"でもお伝えしました様に、副作用が少ない薬剤で効果が十分に期待できる薬剤がまだ残っていますので、是非認知症専門医にご相談ください。
方向としましては「専門医にご相談を」です。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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