第8章 認知症のこころ 認知症患者のこころはどのように?4項・安心と楽しみを持てる環境作り
”楽しい事”を作って気持ちの安らぎを
できれば、相手の認知症の方に合わせた「パフォーマンス」を工夫したいところですが、これが、意外と難しいことがあります。
言語での疎通が困難なことが多くありますので、失語症状があることを前提として、疎通性の形成をする方法を模索してください。
握手でも、ハグでも、ハイタッチでも結構です。また、暖かいタオルで手を拭いてあげる、顔を拭いてあげるのも、効果的です。
朝一番のお茶いれも良いでしょう、お茶やコーヒー、紅茶、その他いろいろの飲物を提供することも良いでしょう。
季節や時々の話題づくりも考えて提供しましょう。夏の暑い時は、氷を入れた飲物、ちょこっと冷やしたスープも良いでしょう。
こうした、楽しみを毎日くれるヒトを目指しましょう。もちろん毎日同じでも良いのです。重要なのは日々続けることです。
これで、迷い込んだ世界で、安心と楽しみを認知症の方に作ってあげれば、気持ちが安らぎ、不安と恐怖から離れられて癒されます。
こういうことが、認知症の方には嬉しいことになります。
小さな、些細な、チョコットのことを毎日続けていく、この地道な対応、心遣いが認知症の方の気持ちを温め、楽にしていきます。
家族だからできる後悔のないケア
初めて会う認知症の方と、繋がりを形成していくのには時間がかかります。
しかし、家族であれば、もっと時間がかからず、関係性が出来ているところからスタートするので、時間が稼げます。
高齢認知症者では、時間は限られています。日々認知症が進行します、身体も衰えていきます、介護の家族も年をとります。後で振り返って、時間の大切さをつくづく知ることになるのです。介護はとっても大変ですけど、一緒に過ごせた時間は貴重に感じます。
あれも、これもしておけば良かった。ここへも、あそこへも行っておけば良かった。これも、あれも聞いておけば良かった等など、後悔があとを絶ちません。
家族であれば、思い立ったその時から、何でもしてあげられます。昔からの毎日一緒に日々を過ごした家族を身近に見れば、どれだけ安心して記憶の彼方に消えていく世界に必死に自分を探さなくても、今を生きる楽しさや嬉しさが感じられて、今を自信持って生きられます。その気持ちを思い出と一緒に分かち合える、その関係にある家族という貴方がたは大事な存在です。
きっと貴方がたが認知症になった時に、そう感じるとおもいます。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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