第4章 環境の話 第1節 家庭環境4項・これから考える認知症予防の工夫
日常品から認知症の兆候を知る
その他、日々の生活の日常品でも認知症の兆候を垣間見ることができます。
食器、衣類などが真っ先に目につきます。食器では、大体使う食器が限られて、いつも同じモノで代用されていることが多くなって、流しに並ぶ食器は、おおよそ同じで数が少なく限られています。またそれらの洗浄が行き届かなくなって、ぞんざいでいい加減な様相を呈して、汚れが結構目につきます。
これは、衣類でも同じで、同じものを季節が変わっても着続きておられ、認知症が進みますと毎日同じ衣類を洗濯もせずに、寝る時も同じで着た切り雀の状態である場合もあります。ですから、同じ衣類で汚れが目立ち、臭いがしてくるときは認知症の危険性があります。
毎日の習慣から認知症予防を考える
多くの家にお仏壇があり、高齢になると先祖への敬いがもたげてきて日々お線香をあげてお参りされます。まして配偶者に先立たれますと、日々のお勤めを欠かさずされる状況で、それが何年か経つと、認知症が始まっても、特に昔のお参りの習慣が残ってられますと、お線香の火はマッチを擦って点けないとイケない、そういう仕来りがあってマッチで火を点けられます。しかし、これが認知機能低下と視力低下に手指巧緻運動障害が重なって手元不如意になってナカナカ点かず、マッチが燃えてアツツツとなり取落して畳が焦げることになります。また蝋燭がしっかり蜀台に立っていなくて倒れたり、ポトッと扱けたりしますと火災の原因となります。火事が起こりやすい状況ができてしまいます。高齢者や認知症患者様のお宅へ行きますと、お仏壇の前の畳や絨毯に焦げ跡がないか注意して見ることが必要です。
このように、家庭には認知症の兆候を知る手がかりが沢山あり、認知症予防につながる工夫も考えようではいくつもあります。皆さんも是非、いろいろ考えてみて下さい。
占部 新治(うらべ しんじ)
- 経歴
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- 1976年
- 北海道大学 医学部 医学科卒業
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1980年
- 北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
- 1981年
- 北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
- 1995年
- 札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
- 1999年
- 札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
- 2001年
- 札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
- 2007年
- 北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
- 2011年
- 京都 三幸会 北山病院 副院長
- 2013年
- 京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
- 専攻領域
- 精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
- 主な著訳書
- 日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
- 主な著書
- 臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
- 所属学会
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- 精神神経学会 専門医、専門指導医
- 老年精神医学会専門医、専門指導医
- 認知症学会専門医、指導医
- リハビリテーション医学会 臨床認定医
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