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コラム

認知症全般知識に役立つコラム

認知症学会専門医 占部 新治先生による、「認知症全般知識に役立つコラム」です。第1〜第4 金曜更新!

占部先生のプロフィール

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第1章 症状の話 第2節 最初の兆候4項・最初の兆候はご本人にとって人生で初経験の不安や恐怖

最初の兆候はただ忘れたで片付けられない異常な感覚や経験

2016年のアカデミー賞に輝いた「アリスのままで」に描かれているアルツハイマー病に罹患した主人公は、アメリカ東部の大学で言語学の教授をされていて、普段からよくされていた大学構内のジョギングに行った際に、見慣れた大学構内にもかかわらず、ふと自分が何処にいるのか分からなくなり困惑して立ち止まり、辺りを不安顔で見回すシーンがあります。最初の兆候で、初めて感じる「知っている筈なのに、どこなのか分からない」という不安感に対する表情が大変リアルに表現されていたのには驚きましたが、正に人生で初経験の不安、恐怖です。

今回ご紹介したエピソードは、ただ忘れたというのでなく、異常な感覚・経験で「何だこれは!?」だったと思います。
ご本人が、初めて経験する何とも言いようのない不安、恐怖の体験として感じられる状況が、まさしく「最初」の体験だったので印象強く記憶に留められたのでしょう。
 物忘れだと、あれどうしたかな、不注意でよくあることと気にも留めないで行き過ごしてしまうでしょう。
だけど、いつもの感じと全く異なる、異次元の不安感情を抱く「最初の兆候」もあるのです。

目にした情景から受けて生じた感情が、これまでにない感覚としてとらえられる。
その時、生じた情動は処理されない異質な情動で、「何なの?」という得体のしれないモノとなる場合が、「最初の兆候」なのです。

占部 新治(うらべ しんじ)

経歴
1976年
北海道大学 医学部 医学科卒業
1980年
北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
1980年
北海道大学 大学院 医学研究科生理系修了 医学博士
1981年
北海道大学 医療技術短期大学部 理学療法学科 助教授
(現:北海道大学 医学部 保健学科)
1995年
札幌医科大学 精神医学講座 講師 外来医長
1999年
札幌医科大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
2001年
札幌医科大学 大学院 保健医療科学研究院 教授
2007年
北海道大学 大学院 保健科学研究院 教授
2011年
京都 三幸会 北山病院 副院長
2013年
京都 三幸会 第二北山病院 副院長 現在に至る
専攻領域
精神医学、 神経科学、 リハビリテーション医学
主な著訳書
日経サイエンス「 運動の脳内機構」 E.V.Everts著
主な著書
臨床精神医学講座 S9 アルツハイマー病(中山書店)、精神医学 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野(医学書院)、「学生のための精神医学」(医歯薬出版)
所属学会
  • 精神神経学会 専門医、専門指導医
  • 老年精神医学会専門医、専門指導医
  • 認知症学会専門医、指導医
  • リハビリテーション医学会 臨床認定医

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