最初の兆候はただ忘れたで片付けられない異常な感覚や経験
2016年のアカデミー賞に輝いた「アリスのままで」に描かれているアルツハイマー病に罹患した主人公は、アメリカ東部の大学で言語学の教授をされていて、普段からよくされていた大学構内のジョギングに行った際に、見慣れた大学構内にもかかわらず、ふと自分が何処にいるのか分からなくなり困惑して立ち止まり、辺りを不安顔で見回すシーンがあります。最初の兆候で、初めて感じる「知っている筈なのに、どこなのか分からない」という不安感に対する表情が大変リアルに表現されていたのには驚きましたが、正に人生で初経験の不安、恐怖です。
今回ご紹介したエピソードは、ただ忘れたというのでなく、異常な感覚・経験で「何だこれは!?」だったと思います。
ご本人が、初めて経験する何とも言いようのない不安、恐怖の体験として感じられる状況が、まさしく「最初」の体験だったので印象強く記憶に留められたのでしょう。
物忘れだと、あれどうしたかな、不注意でよくあることと気にも留めないで行き過ごしてしまうでしょう。
だけど、いつもの感じと全く異なる、異次元の不安感情を抱く「最初の兆候」もあるのです。
目にした情景から受けて生じた感情が、これまでにない感覚としてとらえられる。
その時、生じた情動は処理されない異質な情動で、「何なの?」という得体のしれないモノとなる場合が、「最初の兆候」なのです。